特集 眼科外来診療マニュアル—私はこうしている
外来における診断のポイント—私はこうしている
主訴からみた疾患
眼精疲労
蒲山 俊夫
1
Toshio Kabayama
1
1東京労災病院眼科
pp.1507-1510
発行日 1989年9月30日
Published Date 1989/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410210979
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
眼の疲労は「気持ち良く見える」状態を越えたときに生理的に生ずると言われている1)。例えば調節作用の上で,「気持ち良く見える」という状態とは,網膜上に結ばれた像が焦点から0.5diopter以上はずれていない状態であり,また調節能力の2/3未満を使用するだけでその網膜像を維持できる状態であると定義されている2)。また輻湊運動の上では,それぞれの視距離に応じて輻湊範囲の3分の1で,かつ中央の部分であると言われている3)。この快適に見える範囲を越えた場合に正常者でも眼の疲労が生じると言える。
眼の疲労は自覚的な表現から,生理的(正常)疲労と病的疲労とに分けて考えると臨床的に便利である4)。生理的(正常)疲労とは急性に現れ,休息によって速やかに,完全に回復する疲労のことである。これに対して病的疲労とは慢性に移行した蓄積疲労で,休息によって回復せず,疲労の残余が次々に蓄積され,器質的変化を惹起するに至ったものである。すなわち作業負荷がないにもかかわらず,疲労症状を強く自覚するものである。
Copyright © 1989, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.