談話室
インド旅行記(2)
上野 弘
1
1京都府立医科大学眼科
pp.899-906
発行日 1960年4月15日
Published Date 1960/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410206954
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12月3日,予定より遅れて,8時前,New Delhi空港を飛びたつた。この日も全くの快晴で,時折,フト前方から現われて,後方へ流れ去る小さな白雲も,吾々の視野をさまたげる程でもない。Indian Airlines Corpo-rationのサービスは,今回も,心持よく,空の旅を楽しませてくれた。離陸程なく,先日訪れたTaj Mahalの近くを通過しつつあるとの放送で,指された方角を探してみたが,遙か上空から見るとインド大陸の広大さの中では,流石のTajの存在も,一点に過ぎない貧弱なものなのであろうか,目にも止らずに過ぎ去つた。遠くDeccanの高原が見え始めると,機の右窓にArabianSeaのマリーン・ブルーが展開して来る。ここに突き出た岬の尖端を占めているBombayの街は,強烈な熱帯の太陽光で,あざやかに浮堀りされて,実に美しい。10時45分,Bombay空港に着陸する。
空港から市内への連絡バスの中で,隣合わせに坐つていたインドの中年紳士から話しかけられた。何でも,アメリカのさる有名大学で,美術と歴史を修めたと言つていた。学問と趣味とをかねて,アジア諸国を旅行したが,まだ日本だけを知らないので,来年の秋にでも訪問しようと考えているとのことであつた。
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