寄稿
伊藤正男先生の思い出
永雄 総一
1
1希望病院,のぞみ高次脳機能研究所
pp.1372
発行日 2019年12月1日
Published Date 2019/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201456
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私が伊藤正男先生に初めてお会いしたのは,1973年の医学部2年の生理学の講義でした。小脳片葉による前庭動眼反射の学習制御仮説を,先生は黒板を使って丹念に説明されていました。
1979年に私は先生の教室の院生となり,40年近く先生の仮説のキーとなる眼球反射の実験を様々な動物を使ってさせていただきました。その間先生はこういう実験をしたらどうかと提案されることはありましたが,その結果や解釈については何もおっしゃいませんでした。先生のお考えが隅々まで分かるのは,論文の原稿を直していただいた時だけでした。また,難しい実験を先延ばしにしても先生は黙認していました。教室の先輩方も,伊藤先生の指示に盲目的に従ってはだめという意見の方が多いようでした。要するに「私の指示を参考にして自分の頭で考えて実験をし,その結果を自分の頭で考えて論文を書きなさい。必要ならば結果を見て,私の考えも修正します」が先生の基本的スタンスであり,「論文まだですか。いつでも直します」が先生の口癖でした。
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