談話室
川喜田教授著「病原微生物学よりみたトラコーマの諸問題」と題する論文を拝読して(2)
金田 利平
1
1札幌天使病院眼科
pp.899-902
発行日 1959年5月15日
Published Date 1959/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410206678
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第3章 トラコーマ症候名説を主張するのは決して私等2,3人ではありません
川喜田教授は本誌17頁に「たしかにトラコーマが一つのspecificなmicrobial agentによつておこることを疑う人は今日まずないだろうと考えられる」23頁に「トラコーマがウイルス病の一つであることを今日人は疑わないが」26頁に「トラコーマをウイルス病とみなす充分な根拠がある」と記載されてますが私はすべてのトラコーマが一定のウイルスの感染によつてのみ発病するという説には絶対に賛成出来ません。その根拠の一部は最近の眼科雑誌にのべました。鈴木教授は種々の根拠からトラコーマとは原因的病名ではなくて,症候名である。我々が日常臨床で取りあつかつているトラコーマは単一のウイルスのみの原因によつておこる眼病ではなく他にも原因がある,病因は単一ではない,トラコーマ症候名説,2原論を主張する方であり,大石教授も同様な見解の方であることも川喜田教授は充分御存知のことでしよう。藤山教授著昭和26年発行の「トラコーマの病原」三井助教授著日本眼科全書「トラコーマ」を御覧になればおわかりの様に日本にも外国にもトラコーマは一定の病原体,ウイルスの感染によつてのみ発病するという論に川喜田教授も主張される様なトラコーマウイルスが必要(須)不可欠の病因であるとする論に異義を主張した眼科医もおつたということは川喜田教授もおわかりのことで御座いましよう。
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