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特集 第9回臨床眼科学会号
シンポジウム--トラコーマ
トラコーマの疫学とその予防対策への応用
Epidemiology of trachoma and its application to Trachoma Control measures.
中島 章
1
,
大竹 卓一郎
1,2
A. Nakajima
1
,
T. Otake
1,2
1順天堂大眼科
2日大眼科
1Department of oph. thalmology, Juntendo University.
pp.124-131
発行日 1956年2月15日
Published Date 1956/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410205590
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1.序
トラコーマ(以下トと略)の疫学については,古来多くの研究がなされて居り,最近でも多くの業績がある。最近抗生物質やズルフアミン等がトの治療に応用される様になつて,トの治療法は著しく進歩した。それに伴つて失明の原因として,膿漏眼,角膜軟化症と共に重要な地位を占めていたトも1),失明原因としての重要性を失いつつあると云はれる様になつた。実際,ペニシリンの出現を境として,膿漏眼による失明は殆んど根絶されつつあるかに見える2)。従つてトについても同様の事を期待するのも無理ではないであろう。しかし膿漏眼による失明の減少にはペニシリンの不した効果が絶大なものであるにしても,それと同時に,性病予防対策やクレーデ氏法等一連の予防注も大きく寄与していた事を認めねばならないであろう。又,膿漏眼は急性に起り,周囲の人々に見逃される事は少く,発病すれば殆んど必ず医療を受ける(特に失明の恐れある重症の場合)と考えてよい事は,ペニシリン療法の効果を一層確実なものにしているであろう。
トはこの様な点で火分膿漏眼とは異つた事情にあると老えなければならない。トは経過の長い伝染病であり,その末期に起る種々の合併症によつて失明が起るのが常であつて,多くの点で結核と対比して考えられるものである。
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