Japanese
English
臨床実験
シェイエ手術後に発生した白内障の消長に関する臨床的観察
Evolution and Regression of Traumatic Cataract
清水 敬一郎
1
,
松井 久和
2
Keiichiro Shimizu
1
,
Hisakazu Matsui
2
1川崎市立病院眼科
2慶応大学医学部眼科学教室
1Department of Ophthalmology, Kawasaki City Hospital
2Department of Ophthalmology, Keio University School of Medicine
pp.1009
発行日 1973年8月15日
Published Date 1973/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410205004
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37歳の男性の緑内障眼に,シェイエ手術後6日目に白内障の発生しているのを認めた。本自内障は手術中の水晶体嚢の損傷による一種の外傷性自内障と考えられるが,その混濁の平面的な広がりは発見時においてすでに水晶体上半分を覆つており,その深さはほぼ後嚢近辺に限局したものであり,前嚢部皮質中心部には認められなかつた。混濁の性状には2種類が区別された。すなわち上方部はあたかも毛糸を密により合わせて後嚢部を裏打ちしたような,徹照不能なほどの濃い混濁であり,下方部の混濁の先端部は一見後嚢内面における小水泡の群生,あたかも水面を覆う氷片のごとき淡い混濁で,特に水泡の中心部はほとんど透明であり,周辺部のみやや肥厚し,不透明となり,徹照所見では真中のすけたモザイク模様のようにみえる混濁である。この混濁は術後10日目の観察で先進部はほとんど水副本下縁に達しており,上方の密な混濁部も瞳孔領を覆う状態であった。しかしながら混濁の深さにはほとんど変化は認められなかつた。発見時より4日間の間の混濁先進部の拡大の速度は平面的には1日約1mm位と推定される。
本症例の混濁の発生機序に関する問題,特に赤道部近辺の水晶体嚢の損傷において,なぜ前嚢部には混濁が発生せず,後嚢部近辺のみに限局して比較的平面的な発達をするかということに関して,ある程度形態学的にも説明しうるものと思われる。
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