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特集 第26回日本臨床眼科学会講演集(その1)
講演
学会原著
円錐角膜の角膜移植後に認められたいわゆる「不可逆性散瞳」について
"Irreversible Mydriasis" after Keratoplasty for Keratoconus
小向 正純
1
,
大橋 孝治
1
Masazumi Komukai
1
,
Koji Ohashi
1
1慶応義塾大学医学部眼科学教室
1Department of Ophthalmology, Keio University School of Medicine
pp.23-24
発行日 1973年1月15日
Published Date 1973/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410204882
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- Abstract 文献概要
円錐角膜に対する角膜移植後に異常な散瞳の起こることが知られている。この散瞳は移植術後間もなく始まり縮瞳薬はほとんど効果がなく,虹彩色素の脱落,虹彩後癒着などを起こしながら次第に虹彩萎縮に陥り,散瞳は不可逆性となる。その経過中に水晶体前嚢下の混濁を生ずることがあり,また二次的に緑内障を起こすこともある。これまでの報告では自然軽快例はあるが,有効な治療法は報告されていない。
われわれは最近10年間にこの不可逆性散瞳をきたした症例を7例経験した。そのいずれもが円錐角膜の症例であつた。7例中の4例では,Pilocarpine, Escrineに全く反応せず,最終的に不可逆性の散瞳状態に固定した。その2例では術後8日目および20日目より眼圧上昇を認め,後日瀘過手術を行なうに至つた。また他の1例では術後260目より角膜潰瘍を起こし,この3例では移植片は混濁した。残る3例中の1例は移植翌日より散瞳が始まりPilocarpine, Eserine, Phospholine iodide, D.F.P.のいずれも無効であつたが,術後2カ月から3カ月にかけて次第に縮瞳傾向を示し,最終的に径6.0mm程度となつたが,この状態でも縮瞳薬は無効であつた。すなわち不完全な自然軽快例と思われる。
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