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緒言
いおゆる"むち打ち傷害"は数年来大きな社会問題として取り上げられ,本症に関する実験的,臨床的の両面から多くの研究がなされてきている。しかしながら"むち打ち傷害"はあくまで受傷機転をあらわしたものであるが,あまりにも広く大衆にマスコミにより深く印象づけられ,診断名としては全く不適当であるにもかかわらず,医師の中にも混同して使用するむきもある。またこれら患者の訴えは複雑多様で,その上この後遺症が賠償問題と関連して一層複雑化している。そのため病態も多彩で患者の愁訴の起因となる原因をつきとめ的確な診断治療を行なうことが困難で,不幸にして本症に罹患した患者は非常に気の毒である。
しかし実際眼科的訴えがあり,われわれの臨床で遭遇する患者は,受傷後すでにかなり経過したものが多く,頸椎の靱帯や関節包の損傷すなわち頸椎の捻挫であつても,X線写真では骨に異常がみとめられず,たとえあつたとしても軽微なものに限定される場合が多い。今回は,これら頸部傷害者の眼科的症状と中枢神経系の各種疾患の診断ならびに病態生理解明の上欠くことのできない髄液検査,特にその髄液蛋白分画とを調べ,かつ実験的に頸部打撲を行なつた成犬の経時的脳室液蛋白分画と比較検討した。
The ophthalmic symptoms and the cerebro-spinal fluid analysis were studied on four male and two female patients who suffered from cervical trauma. The results were as follows.
1) Ophthalmic findings were an extension of the continuous near point distance, decreases of accommodative power and stereoscopic vision. These results have been previously reported.
2) The cerebro-spinal fluid of the traumatic cervical patients showed a little higher value of the total protein than the non-traumatic one.
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