わたしの意見
眼科医の近代化とは(その2)
井上 洋一
1
1オリンピア・クリニック
pp.994-995
発行日 1970年7月15日
Published Date 1970/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410204347
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近代化への道
私は,近代化というものは,日常の診療または研究の中から生まれてくるものであり,改善または改革せずにはおれない意欲を動機として展開されてくるものと考えている。したがつて新しい器械が備えられ,診療室を近代的に装備することで完成されるものではなくて,医師の良識と職業倫理によつて定められるものであると考えている。具体的に実際的に話をすすめるために,先般本誌に掲載された「日本の眼科の将来」をとりあげてみる。いろいろ建設的な意見が述べられているなかで,大学の指導者が開業医に批判的なことはわかるが,これらの開業医を育てた医局自体に反省のないことはいささか気になる。また,改革の方法として,いわゆる古い先生方の再教育をとりあげているが,「洗眼」,「乙表にしがみつく」等々の事柄にしても,これを改革していくことは,封建的な医局を改革する以上にむずかしい問題ではなかろうか。
私は,いわゆる古い先生方の改革は期待できないと思う。「20年,30年,トラコーマ治療として洗眼を続けてきて,いまさら新しい検査の勉強はできない」という先輩開業医の言葉は真実であり,聞くべきだと思う。したがつて,洗眼が眼科のすべてでないことを十分にわきまえたうえで,毎日の診療に従事し,自分の領域以外の異常を認めたならば,ただちに専門施設に紹介することを義務と認識してもらうことが大切ではないかと考える。
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