銀海余滴
小児眼科医のたわごと
植村 恭夫
1
1国立小児病院眼科
pp.1104
発行日 1969年9月15日
Published Date 1969/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410204145
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国立小児病院が,昭和40年10月に発足して以来満4年を迎えようとしている。近代医学の進歩に伴い,その専門分化が進むにつれて,各分野の専門医師の協力による疾患の総合診断と治療の場を作ることは,各総合病院において発展し,組織化されている。小児疾患に対しては,小児科自体が,その専門分化および総合という面でたちおくれており,またとくに,外科,泌尿器科,眼科,耳鼻科などにおける小児専門医師の育成は,小児外科が,ようやく分化の機運をみせ,小児外科学会への発展をしているほかには,他の各科においてはほとんど行なわれていないのが現況である。
小児医学における各科の連繋も決して緊密とはいえない。小児病院が発足して,関連各科がその理解を深め,連繋をとるまでには,やはり相当な期間を必要としたが,まだ満足すべき状態にあるとはいえない。しかし,それでも,少しずつは進展をしており,今度発足予定の小児医療センターには,遺伝奇形科なる部門を独立させる計画などは,その一端であろう。小児病院に来院する患児の半数以上は,先天異常をもつものであり,それも,単独の臓器奇形にとどまらず,全身多発奇形の患児が多い。このような患児の診療に,遺伝奇形科は,染色体をはじめ各種の検査を指示し,関連各科の検査結果をまとめ,かつ原因を探究し,必要とする治療をその科に依頼し,遺伝相談も行なう部門であり,中央検査科的役割と遺伝相談にあたるものである。
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