編集者から読者へ
編集者のたわごと
所沢 綾子
1
1編集部
pp.10
発行日 1959年4月10日
Published Date 1959/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201837
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新潟市のおすし屋さんにおります.新潟から東京に行く準急は2本しか出ていないのです.ここのおすしの種はとびきり上等です.海に近い新潟のことですから,どこのおすし屋さんに行つてもきつとこんなにうまい種が置いてあるだろうと思います.生ウニがとろりと口の中でとけていきます.一つゆつくりとつまみながら,後1時間半はここでねばらなければならないと,腰を据えて鉛筆を取り出しました.
実は今日,県の看護係長の清水先生に新津の保健所に取材に行くようにすすめられたのです,ここは婦人会と一緒になつて地区活動を活発にすすめている所です.婦人会の方達も張り切つて私を待つていて下さるというのです.「行つてみたい!」と思つたのですが,ここで私はふと考えたのです.編集者というのは確かによいライターでなければいけない.週刊誌のトップ記事は全部編集者によつて作られます.そして新しい言葉を生み出したり,巷にかくれた問題を掘り出して興味あるお話として私達に読ませてくれるのです.そして私達はついそれを本気にして,現代の女性の地位はすごく向上したと思い込んだり,ティーン・エイジャーのドライ振りに驚いたり嘆いたりするのです.しかしこうして,書かれたものがごく一部のものであることは,私達の身近かなもろもろが教えてくれます.
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