談話室
幼児の先天性涙嚢膿漏についての八束米吉氏の論説を読んで
長谷川 信六
1
1甲南病院
pp.87-89
発行日 1964年1月15日
Published Date 1964/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410202870
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八束米吉氏は本誌17巻,7号(887頁)に幼児の先天性涙嚢膿漏に関する論説をかかげ,産科とタイアップして本症を詳しく追究され,私がかつて指圧しても排膿を見ない涙嚢障害があつて,眼脂が多いために単に結膜炎と診断されるものがしばしばある事をかかげ,これを異型涙嚢膿漏と呼んだが,八束氏の研究の結果,新産児にはこのようなケースが意外に多いこと,そして,このものの証明には涙嚢を洗浄することによつて簡単に発見出来ること,指圧によつて排膿を見るものも,見ないものもその間に特別の差のないこと,従つて,指圧排膿を見ないからといつて特に異型と呼ぶ必要のないこと,指圧で排膿を見るものと見ないものの相違は,その時の菌力や個体の抵抗力の相違からくるにすぎないこと,又,涙嚢膿漏は一度のブジールングで直ちに治ること,若し直ちに治癒しなかつたらそれはブジーが鼻腔に抜けていないためで,恐らく副鼻腔に誤入したものであること等を述べられた。
私は,氏の努力に対しては敬意を表するが,だからと云つて,氏のいわれることを総て御もつともといつて拝聴するわけにも行かないので,ここに再び,本症に対する私の経験から生んだ意見を述べ,八束氏の説に批判を加えたいと思う。
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