特集 眼科臨床の進歩Ⅲ
環境と眼
結膜炎と体質
三井 幸彦
1
,
田中 智惠
2
,
山下 喜一
1
1熊本大学眼科教室
2東京女子医大眼科教室
pp.695-698
発行日 1955年4月15日
Published Date 1955/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410202204
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同じ病原体によつておこる結膜炎も,その個人の体質や境環によつて,症状や経過は千差万別である。その体質差は色々の角度から要約することが出来る。即ち人種差,年令差,性別差,個体差などである。
或病気が人種によつて症状を異にする事は事実である。例えばトラコーマに就てみると,先天的にトラコーマに罹らない人種というものは知られていない。併し白人に於ける接種トラコーマは,異人に於けるものより重篤になり易く,又ユダヤ人がトラコーマに罹ると最も重篤な症状を呈するという。結膜上皮細胞に出現するProwazek封入体を見ると,メラニン色素を有する上皮細胞には決して封入体が出て来ない。こういう点から考えてみると,恐らく黒人より黄色人種,黄色人種より白色人種と,次第にトラコーマに対する親和性が強くなり,一度罹つた場合には重篤になり易い体質を持つている様である。地球上のトラコーマの分布は,一見これと矛盾している様に見えるが,それはトテコーマに対しては衞生環境の方がはるかに大きな影響を持つているからである。
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