連載 眼科圖譜・6
白内障全摘手術 Cataract total viz.intracapsular extraction
井上 正澄
pp.1067-1068
発行日 1954年11月15日
Published Date 1954/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410202018
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白内障嚢内摘出即ち全摘出の歴史は古くDaviel 1845に始まり,Kalt 1894, Smith 1897, Knapp1914, Torok 1915, Verhoeff 1927, McLean 1940, Sedan 1947, Bell 1948そのほか多くの術式改良によつてステツプの多い高級な眼内手術となつた。そして今日でも時々刻々と漸新な改良法が内外において発表されている。昔から行われて来た白内障嚢外摘出のうち弁状摘出では5段のステツプがあり,現代的な嚢内摘出では8段のステツプがある。後者の所要時間は前者の約3倍,後者で要求される技術は前者の約5倍と見る事が出来る。前者のステツプはアキネジア,1/3円周の角膜切開,虹彩切除,切嚢,水晶体核の娩出で,後者のステツプはアキネジア,前置縫合,1/2円周の角膜切開,虹彩切開,チン氏帯の離断,水晶体の娩出,前置縫合糸の結紮,結膜弁の縫合で,このうち前置縫合と水晶体を嚢内に娩出することには特殊の技術を必要とする。而して全摘出の大きな特長としては嚢外摘出の適応症でない未熟白内障,過熟白内障,脱臼水晶体などを手術する事が出来るし,鞏角膜縫合によつて術後の絶対安静は必要なく,患者の体力を消耗することは少くなつた。
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