銀海餘滴
結核の治療は共同で
藤田 眞之助
pp.1057
発行日 1953年12月15日
Published Date 1953/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201697
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現在結核の治療界は見方によつては非常に混亂した状態にあるといえる。最近における化學療法の著しい進歩によつて,結核の治療がきわめて複雑になつてきたのもその原因の一つであろう。たとえばある一つの空洞を認めた場合にも,あるいは化學療法を試み,あるいは虚脱療法を,また直達療法を行おうとする。,化學療法にしても,耐性のできにくいような併用療法をとることは當然であるが,その藥劑の組合せや治療期間をどうするか,虚脱療法でも氣胸,氣腹,成形その他どれを選ぶか,直達療法にしても切除,切開等があり,切除のうちでも肺葉.區域,部分等いずれを行うかなど,その適應の決定はなかなか困難である。これらの治療法の境界は判然と區別されるものではなく,お互いに入り亂れているのを實情である。
どちらかといえば,内科醫は保存的な治療を考え,外科醫はすぐ手術をという傾向がある。たとえば泌尿器科醫が腎臓結核患者を治療するように,肺結核患者を治療する場合にも,一人の醫師が化學療法や外科療法などと併用しつつ一貫した治療をつづけるのが理想であろう。しかし實際には,療養所その他特殊な施設を除いて,内科醫と外科醫とが別々になつているのが現状であるから,兩者は密接に連絡して,協力して治療を進めねばならない。
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