特集 眼科臨床の進歩Ⅱ
アイソトープの眼科的應用
池田 一三
1
,
古味 敏彦
1
1大阪市立醫科大學眼科
pp.761-766
発行日 1953年11月10日
Published Date 1953/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201631
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Ⅰ.アイソトープの利用にいたるまで
同位元素(lsotope)とは,原子番號(AtomicNumber)が同じで,質量數(Mass Number)の異る元素同志のことをいう。原子番號が同じということは,原子の外廓をなす電子の配列が同じである,すなわち化學的性質が全く等しいことを意味する。つまり,質量が異るにかかわらず化學的には區別をつけられない元素同志をさすのである。
物理學の方から見ると,同位元素の利用は應用原子核物理學の一部門を構成しているが,今日では,醫學・生物學にも廣大な領域を占めており,Biological&Medicel Physicsといえば直ちにこの部門を指すほどである。その母胎をなす核物理學(Nuclear Physics, Kernphysik)は,1898年,パリーの雨もりのする物置小屋から生れた。すなわちH.Becrquerrelがはじめてウラニウム鑛石の發する伸秘な放射線を寫眞乾板で受け止めてから2年目に,Marie&Pierre Curieがピッチブレンドを根氣よく碎きかきまぜつづけた揚句,ラジウムを取り出したのである。そして早くも3年後には,ラジウムがLupus Erythematosusの治療に用いられ(Daulos&Bloch,1901),放射性物質の醫學への應用が始まつている。
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