特集 眼科臨床の進歩Ⅱ
位相差顯微鏡Phase Contrast Microscope (PM)に就て
淺山 亮二
1
1京都大學眼科
pp.741-749
発行日 1953年11月10日
Published Date 1953/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201628
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近世顯微鏡が發明せられて既に3世紀を經過したが,更に亦,其分解能を超えて微細に亙る生物學的研究を訂能とする爲には,紫外線や電子線を利用しての紫外線顯微鏡,電子顯微鏡が考えられて居る。然し一方細胞や微生物を生きた儘で鏡見して其微細構造を知り度いと言う希望に對しては上述の方法は解決を考えて呉れない。從來の顯微鏡でも絞りを極度に絞る事に依つて,或は廻折光のみを利用する暗視野装置に依つて多少は此望を叶える事が出來たが,染色標本と比肩し得る程の検索効果は與えて呉れなかつた。此處に此要望に答えて現われたのが,位相差顯微鏡PMである。之に因つて細胞の微細構造を自然に近い状態で正確に觀察し得,殊に特殊固定,特殊染色に因らなければ見得なかつた微細構造を自然に近い状態で觀察出來る樣になつた。此處にPMのもたらせた大きな意義がある。此領域の研究は,眼科方面では尠く,我々(淺山,松山,中島,山元)は,昭和25年近畿眼科學會に於ける發表以後一連の研究成績を發表して來たが,他に昭和25年,水野,昭和26年横山,1951 I. Francois&M. Rabaeryの報告が之と前後して現われた。
今其歴史を略述すると其源はAbbe (1892)の顯微鏡像の生威理論に萠芽して居,Bratuschek(1892)は此理論を實驗的に立證した。
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