臨床實驗
涙嚢剔除術における外壁剥離への一私見—簡易なる涙嚢剔除術
上岡 輝方
1
1秦野赤十字病院眼科
pp.379-381
発行日 1953年5月15日
Published Date 1953/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201490
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涙嚢剔除術は,各症例によつては,解剖的異常を示すこと多きこと,又涙嚢周圍炎を經て,涙嚢壁が周圍と癒着強き場合の多きこと又は,豫期せざる大出血等の偶發症などあり,手術に當りては勿論周到の注意が必要とされるが,一般には,容易なる手術とされている。然しながら涙嚢剔除に當り,初心者が最も困難を感ずるのは,涙嚢外壁即ち耳側の剥離であろうと思われる。
即ち鼻側,上部,底部の剥離は極めて容易であるが,耳側は涙小管との連絡を除いて眼窩隔膜(眼板眼窩靱帶)と密着しているので,境界は不明瞭であり,剥離の見當がつけ難い。從つて若しも外壁剥離に當り,見當を誤るか,或は暴力を加えて涙嚢被膜及び之と密着せる眼窩隔膜を破る場合には,眼窩内の脂肪組織が創間に膨出して來て手術の操作を妨げ思わぬ長時間を要し,且つは眼窩内傳染なる不快事に遭遇することもないではない。
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