臨床實驗
井上氏鉤の研究(第1篇)—井上氏鉤の視認距離
川田 榮二
1
1豐川市民病院
pp.20-21
発行日 1953年1月15日
Published Date 1953/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201392
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緒言
視力検査に使用される試視力表は正確で便利であることが必要である。文字を視標としたものは非常に便利であるが,個人的差異や變動の認められる文字があつたり又暗記され易いといふ不都合を有する。「ランドルト」氏環(以下「ラ」氏環と略稱す)は正確であるが文字程手輕には取扱へない不便を有する。然し視標としては「ラ」氏環の如く形が同じで唯大さのみを異にするものが理想に近いものと云うことが出來よう。本邦に於ては此の樣に簡單同形の視標に井上達二氏の鉤状試視力表がある。故小口教授は此の井上氏鉤を評して「Snellen氏鉤は初め我が邦に廣く用ひられたりしも中頃大いに虐待され僅かに井上氏が再興するに至れるものなり。予は始めより此の鉤を好み常に之と離るゝこと能はず,故に井上氏の論文出づるや大なる感喜を以て之を迎へたり」と記して居られる。此の井上氏鉤は視力に關する實驗には多くの研究者に利用されている。然し井上氏鉤そのものに就いては未だ充分に研究し盡されている.とは云えない現況であるので私は其性質を究め同時に此の視標を用いて視認と對比との關係を明らかにせんとして本研究を行つた。
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