2頁の知識
電子顯微鏡の知識
福見 秀雄
1
1國立豫防衞生研究所
pp.24-25
発行日 1951年5月15日
Published Date 1951/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906853
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普通の顯微鏡のことを,電子顯微鏡が出來てから,私達は光學顯微鏡と言うことにしています。光學顯微鏡はどんなに巧妙に作られても,その分解度には限度があり,換言すれば大体0.2μ程度以下のものを見ることは光學顯微鏡では理論上不可能です。それはどうしてかというと,光は一種の電磁波から成つていますが,この光によつて物を見ようとする場合には,その光の波の波長よりもあまり小さい物は見ることが出來ないということに理論を持つています。これは考えてみれば當然なことで,私達は物を光で顯微鏡下に見るときには原理的にはその陰を見ているのですが,第1圖のように,池の面に石をなげこむと,その池の面に出來た波が四方にひろがるときにその波の波長よりも大きいものの後には陰が出來るのは,波長よりも小さいものの後には陰が出來ないことで容易に理解出來るでしよう。
したがつて光學顯微鏡よりももつと小さいものを見ようとすれば光のかわりにもつと波長の小さいものを用いねばなりません。そこで光のかわりに電子線を用いるように装置したのが電子顯微鏡です。電子線もまた波とかんがえてよいのですが,その波長は勿論電子線の走る速度でちがいますけれども,甚だ小さいもので,これなら1mμ位のものも理論から言えば何なく見えるはずです。
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