特集 眼科臨床の進歩Ⅰ
眼結核の局所特殊療法
今泉 龜撤
1
1岩手醫科大學
pp.811-817
発行日 1952年11月15日
Published Date 1952/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201307
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
緒言
結核の治療は,最近數年の間に,相次ぐ新藥の登場によつて,一紀元を劃するに到り,新しい抗結核劑が発表される毎に,その藥効が多少過大評價される傾向にあるとは云うものゝ,その眞價は誰も疑う者はないと同時に,將來に對して更に大きな期待と共に,一種の恐怖に似た感じさえ禁じ得ないのは,1人著者のみではないだろう。然し之等の抗結核劑の最初の評價は,凡て全身投與の場合であつて,眼結核の局所的特異性から,肺結核乃至は全身結核の適用の如く,多量長期間の,高價藥劑の全身投與が,如何に時間的に,経濟的に不得策で,且つは無益であるかは,眼科醫の等しく痛感することであろう。從つて眼結核の治療に當つては,抗結核劑の病巣直達法乃至介達法が,即時奏効を期待し得る効果面から,眼結核の唯一の最適方法であるばかりでなく,藥劑によつては少量を以つて最高の効果を學げ得る點と,患者負擔からする経濟面に於て,之に過ぐる方法は無いと信じている。
現在,吾々が使用している眼科領域に於ける抗結核劑は,ストレプトマイシン,パス,チビオン,プロミン,イソニコチン酸ハイドラジツト等で,この外に補助藥劑として,コーチゾンがあるが,之等の藥劑による全身的應用は,他の機會に讓り,今回は敘上の意味から,吾々が最も愛用している之等藥劑の局所療法に就て,紙面の都合から文献的考察は除外して,專ら自家經驗に關して述べる。
Copyright © 1952, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.