原著
不妊と基礎代謝との關係
村山 茂
1
1慶應義塾大學醫學部産婦人科教室
pp.8-17
発行日 1952年1月10日
Published Date 1952/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200569
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1 緒言と研究材料及び研究方法
緒言—甲状腺機能の著明な障害が不妊を來たす事は長年知られている事實であり,輕度の機能障害も受胎性に影響を及ぼす事に獣いても從來種々の事が云われている。甲状腺と生殖器との間に密接な關係のあることは,一時的な甲状腺の肥大が屡々思春期,月經,性的刺戟,妊娠,授乳と相伴うことや1)2),甲状腺の疾患が屡々思春期や特に閉經期におこる事等によつても暗示される。この關係は月經や生殖器の異常が屡々甲状腺の疾患と相伴い,そして甲状腺の治療によつて屡々有效なる結果を得ることによつて一層強調されている。
甲状腺は身體の一般的代謝を適當な水準に維持し,組織の成長,分化,並に含水炭素,脂肪,蛋白質の代謝,及びCa.Mg.の排泄に關係し,更に循環系,神経系,性腺其の他の内分泌系にも影響を及ぼすものである。而して甲状腺の機能測定松としては,基礎代謝率.(以下BMRと呼ぶ)の測定を以てする方法の他に,血清コレステリン値の測定や,経口的に放射性沃度の投與を以てする方法等がある。BMRは室腹安靜時に於ける酸素の消費量を測定することによつて決定される。これは身體各種細胞内酸化機轉の最も低下せる時期に於けるエネルギー代謝の総和と看做され,心活動,呼吸活動,常時機能する腺の活動,體温維持のための温發生等がこれに關與する。
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