臨床實驗
本邦青少年に頻發する慢性軸性視神經炎と歐米に云う所謂多發性硬化との問題に就て
鈴木 宜民
1
1千葉大眼科
pp.714-716
発行日 1952年9月15日
Published Date 1952/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201274
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慢性軸性視神經炎(以下慢軸と略)殊に輕症の慢軸が本邦青少年に多發する事に就ては今次戰時中伊東教授が特に強調された處であるが,本症の認識に就ては一般には尚深い關心が寄せられて居ない樣である。私は伊東教授の許にあつて此處數年來屡々本症を見るの機會に惠まれ,今日吾々の教室に於ては一應の確信を以つて診斷を下しておる。而して吾々が廣く慢軸と診斷する症例は凡そ次の樣な症状を具へておる場合である。即ち患者は眼精疲勞,羞明,霧視,眼痛,頭重頭痛或は眩量(主として一過性の立くらみ),ポロプシー更に全身倦怠感等を高率に訴へ,讀書乃至近業の支障或は能率の低下を主訴として來るものであつて,然も視力は大多數に於て兩眼共に正常範圍にある。更に中心暗點を高率に證明し(河本氏暗點計),眼底にはしばしば乳頭の充血,静脈の擴張を認め,且つ乳頭から黄斑こかけて乳樣反射の強いのが特長である。勿論此等の症状の程度には輕重種々の組合せがある。要するに從來慢軸と云へば主として視力不良なものと云う通念から一歩前進したもので,其の程度は遙かに輕微で大多數が視力正常範圍間に在る,此の事は市原の發表にも明らかな處であり,斯かる見地に立つて同教授は特に輕症慢軸と呼び,本症が視力良好なるが故に稍々もすると輕く看過され易い點を深く指摘されたのである。
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