臨床實驗
房水排出路に關する私見
大橋 孝平
1
1慈大
pp.555-557
発行日 1952年7月15日
Published Date 1952/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201218
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正常房水の排出路に就ては,古來から隅角部とシュレンム管を經る前毛樣體靜脈系排出路及び虹彩毛樣體血管を經る渦靜脈系排出路の2系が考えられている。然し從來はことにシ管を經る房水路が最も重視され,房水がシ管内に入る機序に就ても直接流入説,濾過説等があつて多くの論爭の的となつている。然し近來迄の諸家の研究を綜合すると,結局シ管(Schlemm 1830年)又は鞏膜洞(Rochon-Duvigneaud 1892年)は一層の内皮を有し,互に吻合する叢状の輪走管であることが確實となつていて直接に前房とは開通しないで(Sugar),時には極めて微粒子のみが流入するが,細胞成分は櫛状靱帶までゝ押し停められ,正常房水は決して直接靜脈洞内には進入せず内皮細胞を介して液状成分のみが進入するのであると考えざるを得ないのであるから,房水の内の液體のみが洞内を經て前毛樣體靜脈系へ排出されることは可能であり1942年Kinseyの研究ではシ管は水,電解質,非電解質に對して出口をなすが,水のみであれば葡萄膜でも角膜でも内皮はどこでも自由に出入するといゝ,更に房水中の非電解質は毛樣體上皮と虹彩前面の根部のみで自在に出入し,Na如き電解質は毛樣體より分泌するが逆吸收はしない。然し病的となれば内皮障害あるかぎり溶液の出入は不規則となるわけである。
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