臨床實驗
僞近視とワゴスチグミン
服部 知己
1
1駿東病院眼科
pp.246-248
発行日 1951年4月15日
Published Date 1951/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200826
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緒言
僞近視に關しては,古くより注意を換起されてはいるが,其の診斷,治療の繁雜さのために,案外實際の診療面に於ては輕く取扱かわれているのではないかと思われる。僞近視が,腺病質や神經質の青少年に起り易いという事は,從來より觀察されてはいるが,終戰後近時特に幼少年期或は青年期男女に,ヒステリー性或は神經性眼症を以て外來を訪れる患者が増加している傾向が有り,それ等の患者の内,遠見視力障碍を主訴として眼鏡の裝用を布望し,或は最近處方された眼鏡の不快感を訴えて來る患者を仔細に診斷してみると,僞近視が多く,僞近視,治療により視力は改善され,大多數は治癒して,眼鏡裝用を不要としたものであつた。私は僞近視はさうした神經的素質の者に起り易いと云うより,ヒステリー,其の他の神經要素が僞近視の主因である,との私觀を持つている。ヒステリー,その他の神經症の一分症としての調節痙攣であり,調節緊張であり,毛樣体機能障害であるならば,之に對する眼の局所的治療と云うものは,單に一時的な對症療法に過ぎざるものであつて,根本治療ではなく,短期間で再び一時輕快せる症状の再發するのは,今迄に私の經驗して來た處である。かかる觀點から僞近視に對しては,どうしても,眼局所治療のみならず全身的治療を加えると共に,患者の生活指導環境の改善にまで努力の手を延ばさなければならない。
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