症例
特發壊疽に先驅せる續發性網膜色素變性の1例に就て
樋田 敏夫
1
1日本医大眼科
pp.383-385
発行日 1949年9月15日
Published Date 1949/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200433
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緒言
網膜色素変性には続発性のものと続発性のものとがあり,続発性のものは往時は,梅毒その他の傳染病が原因とされて居た。特発性のものは原因の認められぬものが多い爲,長く原因不明の疾患とされて居たのである.遺傅とか血族結婚に因るといふ因子を閑却する事は出來あが最近内分泌学の進歩と共に何等かの内分泌異常に依ると言ふ説が起つて來て居る.実際に色素変性患者には矮躯の者や円錐角膜を有する者が多かつたり,血管硬化が全身に及んで居たり,血圧が一般に高かつたり,女子は月経初潮が遅れ閉止が早かつたり,乳腺発育が惡かつたりする事がしばしば見られる等何等かの内分泌障碍を思はせるものがある。又植物神経系の方面から之を檢討すると楠元氏の如く,ワゴトニーの結果であるとする者や藥理的実驗をされた安武氏の如く,ワゴトニーに傾いて居るとする者もあり,生井,内山両氏は矢張り同様の見地から変性患者に頸胸部の交感神経切除を行つて居る.是の如く内分泌の方面や,植物神経系の立場から之を観察する様になつて來たのである.飜つて特発壊疽なるものは,的確なる原因は尚不明なるも血管硬化から血管のエムボリーを起し,壊疸を生ずると言ふ説や,副腎の機能亢進の結果,血中アドレナリンが増加し血管が常に緊張し血液循環障碍を來す爲と言ふ説があり,又ジンパティコトニーの傾向があり,此の結果アドレナリンの過剩がおこるとも言はれて居る.
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