Ⅵ温故知新
最近の藤原先生について
弓削 経一
1
1京都府立醫大
pp.90
発行日 1949年2月15日
Published Date 1949/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200329
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机上のペン皿,タバコのケース,書物,總ての物が机の縁に對して,平行か直角かどちらかの方向におかれてある。戸棚の中には,書類,器械,手廻品が夫々所を得て,キチンと整へられて居る。今急用で出られても,歸宅せられても,室内の樣子は少しも變らず,いつも掃除のすんだ後の樣である。机上に順序なく積まれてある樣に見える書類も,順序があるらしい。積んだ順序を記憶せられて居ることが自ら順序になつて居るのかも知れない。此見事な整頓,整理,其底を流れる物品尊重な記憶のよさは,先生の特徴である。此樣な性格の先生であるから本年九月の定年退官迄,教授としての職務をキチンと續けられて,鮮明な區切のついた進退を望まれた事であらうと私は推察して居る。然るに現實は之を許さず,昨年八月,舞鶴國立病院長に御就任が内定し,遅かつたが十二月になつて發令があつて,早速,同病院の院務につかれた。恰かも起床時間に先立つてゆり起され,用事に出された樣な氣分を味はれた事と思ふ。然し,仕事を果して居る間には,寝足らぬ氣持も忘れられる如く,間も無く,舞鶴でのお仕事がピツタリ板についた樣に觀測された。昨年の九月には十二指腸潰瘍で,一時は危篤の態であつたが,十月末にはよくなられた。
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