Ⅰ綜説
眼科的腦手術殊に視神經諸疾患に對する手術の適應に就て
井街 讓
pp.93-97
発行日 1948年7月20日
Published Date 1948/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200240
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〔緒言〕從來眼科醫が手術的に處置し得た視神經疾患は恐らく眼窩内視神經グリオームが唯一のものであつたであらう。而かも之は視力の恢復と言う點に於ては全く何の效果も望めなかつた。然るに近年腦外科技術の急速な進歩普及に伴い開頭によつて頭蓋内視路殊に交叉部附近への到達が容易になつた爲,眼科領域に於ても茲に新しく視神經疾患の腦外科的手術が注目研究されるに至つた。
而して鬱血乳頭の多くが其原因を視神經より比較的離れた位置に有して居るのに對し,單性視神經萎縮症は多く其原因を視神經に極めて近接して有して居る故特に後者が眼科領域での新しい手術の對象となりつゝあるのである。勿論今日に於ても直接視神經に刀を加えるのはグリオームのみであり之が視力恢復の爲の手術でない事は依然同樣であるが,交叉部蜘蛛膜の異常交叉部附近の腫瘍血管異常等に對する手術が既に乳頭の蒼白化を來した樣な視神經の機能を屡々恢復せしめた事實が次々に報告されて居る。そこで今日では少くとも交叉部の腦外科はどうしても眼科でもやらねばならない所迄來て居ると思う。否更に一歩進んで眼科で交叉部の腦外科をどんどんやらなければ附近の疾患及び視神經疾患の早期診斷學と治療學は進歩しないだろうと思われる。
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