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特集 Cancer・1
胃癌に対する胃全摘手術適應の拡大に就て
On the Extension of the Indication of Total Gastrectomy For the Grastric Cancer
友田 正信
1
Masanobu TOMODA
1
1九州大学醫学部第二外科
1The Medical Dep't., Kyusyu Univ.
pp.189-195
発行日 1950年4月20日
Published Date 1950/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200633
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1)緒言
胃癌に対する所謂根治手術としては從来胃切除が施されていた事は改めて述べる迄もない. 処で本手術の遠隔成績に就ての輓近諸家の報告に徴して,年と共に認む可き成績の向上があるかと云うと,殆んど全く向上の跡が認められない. 胃切除術に就て手術手技の改良,手術に対する錬磨等は手術の直接成績を良好ならしめ得ても,遠隔成績の向上には直接貢献しない. 数年前,故石山教授は淋巴節轉移の徹底的廓清を強調した. 淋巴節の廓清が胃癌手術に際して肝要な点である事には勿論異論はないとしても,それ丈では尚解決の出来ない問題が残つている. 胃切除が唯一の根治手術ででもあるかの樣な概念で何時迄も進んでいては,胃癌の外科には躍進的な向上は望み難い. それで著者は8年ばかり前から胃全摘手術をもつと積極的に施行する事に依つて遠隔成績がどれ位向上するかと云う点に就て研究を開始したのである. 乳癌や直腸癌の場合とは異なり,積極的な胃全摘と云う事になると,胃の重要な生理敵任務からして,どうしても無胃状態に於ける生体の新陳代謝の問題乃至は生命予後(生命の短縮が来るかどうか)に就て解決をしなければならない関係上,決定的な意見の報告を差控えていたのであるが,66例以上の手術成績と術後の新陳代謝に就ての研究成績に徴して,胃癌も一定の適應症の下に,胃切断術なる概念の下に取扱わる可きものである事を明にするに至り,北海道に於ける日本外科学会で,又昨年日本臨床外科医会で其の論據を報告するに至つた.本誌から癌に就ての執筆を依頼せられたので,玄玄にこの問題を取り挙げたのである.
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