〔Ⅰ〕東京眼科講習會講演録
メチールアルコール中毒の眼症状と療法
庄司 義治
1
1東京帝大眼科
pp.9-14
発行日 1947年4月20日
Published Date 1947/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200168
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I)メチールアルコールの化學
メチールアルコールをMA,ヱチールアルコールをEAと略記する。MAはメタノールとも云ひCH3OHである,材木を乾溜して得た木醋の中に2-3% MAが含まれる。之に石灰を加へ醋酸石灰を去つて蒸溜すると精木精がとれる。之には80%MAと10%アセトン其他が含まれ更に精溜して99.5% MAが得られる。合成するには赫熱コークスに水蒸氣を通しH2とCOとの混合せる水性瓦斯を造り之にH2を加へてH2の容積をCOの2倍にし觸媒を用ゐてCO+2H2=CH3OHの式のやうにしてMAが出來る。木精は黄色を帶びアセトン,ケトン,醋酸メチールエステル,アリールアルコール等を含むで一種の臭氣があるがMAの純品は無色透明EAに似て居る。但し沸點は67℃でEAの78℃より低い。
MAはフオルマリン製造,メチールアニリン,鹽化メチール,メチール硫酸,ヂメチール硫酸製造,塗料油脂の溶劑,人工眞珠工程等に用ゐられる。MA中毒はMA又は之を含むだ飮料を呑むで起る場合が大多數だが酒井氏例の如くMA蒸氣吸入でも起り,皮膚からも吸收される。MAは植物の細胞膜をなすペクチンの構成分子であるから果實からとつた醗酵酒の中には十萬分一位のMAは含まれて居るけれど,かかる微量のMAでは中毒はしない。
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