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『臨床眼科』8月号をお届けする。今号でも第64回臨床眼科学会講演集を特集しており,特にラニビズマブおよびベバシズマブ関連の力作が多い。有田論文では12例21眼の重症未熟児網膜症に対してのベバシズマブ投与の有用性に関する検討がなされており,貴重な報告である。ベバシズマブのような抗VEGF抗体によって重症未熟児網膜症の治療予後が改善すれば,眼科診療において大きな進歩となると考えられるが,そうはいっても超低出生体重児に対して投与するのは副作用発現の可能性を考慮すると,やはり勇気がいるものである。このような詳細な症例報告が多く蓄積されていくことにより,より安全かつ有効な使用法が明らかになっていくことが期待される。その意味で,齋藤論文にあるような血清IGF-1濃度およびVEGF濃度の経時的測定データも貴重な資料になると思われる。一方,松岡論文では多発性後極部網膜色素上皮症(MPPE)に対するベバシズマブの有用性が報告されており,これもまた重要な知見である。加齢黄斑変性の治療の主役は完全にラニビズマブとなったが,川上論文,岩渕論文,藤原論文それぞれにおいてアプローチの異なる解析がなされていて興味深いものとなっている。
そのほかにも多くの講演論文や投稿論文,連載記事を読むことができる。「今月の話題」で町田先生が執筆されている緑内障の網膜電図異常に関するレビューは,近年OCTで注目を集めることになった緑内障早期における網膜神経節細胞異常に関する研究の基礎となるものであり,これまであまりERGにかかわりがなかったというか,あえて避けていた人間(私である)としては,かなり理解するのに苦労したが非常にためになるものであった。どうか皆様もじっくり8月号を楽しんでください。
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