特集 新しい時代の白内障手術
Ⅰ.感染予防
感染時の対応
谷内 修太郎
1
,
平形 明人
1
1杏林大学医学部眼科学教室
pp.60-64
発行日 2010年10月30日
Published Date 2010/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410103398
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はじめに
術後眼内炎は白内障手術の合併症として最も重篤な術後合併症であり,それへの対策は起こさないために最大限の努力を惜しまないことにつきる。しかし,周術期の感染予防対策を十分に行っても術後眼内炎を完全に避けることはできず1),わが国では約0.05%の発症率といわれている2)。
いざ眼内炎に遭遇した際は,初期の緊急対処法が視力予後を大きく左右する。緊急対応の基本は,適切な抗菌薬を適切な濃度で眼内投与することであり,薬剤の網膜毒性も考慮しなければならない。そこでいずれ遭遇するであろう術後眼内炎に対してあらかじめ治療のプロトコールを作成し,早急に対応できる準備を整えておくことが重要である3)。とくに硝子体投与,結膜下投与に用いる抗菌薬の調整方法は,いつでも確認が取れるように医局,診察室,手術室などの目につくところに貼っておくのがよい。眼内炎と診断した際の当院の治療のプロトコールと抗菌薬の調整方法を図1,2に示す。
また,初診時には軽症と思われていた症例でも,その後に症状は急速に進行していくかもしれないと予想し,硝子体手術の時期を逸しないためにも点眼や抗菌薬の硝子体投与で漫然と経過観察をするのではなく,硝子体手術の設備がない施設では早めに緊急対応が可能な病院へ転院させることが必要である。
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