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はじめに
リスクファクター(危険因子)とは,一般に,曝露した個体のほうが曝露のない個体よりも疾患の発症率が上昇するような因子のことを指す。緑内障のような慢性疾患の場合,疾患の発症だけでなく,進展に関与するリスクファクターも重要である。
患者と対照を比較して,患者に有意に多く認められる因子がリスクファクターとして同定される。例えば日本人における緑内障発症の危険因子を知りたければ,日本人全員を調べて,緑内障患者と健常者の間で発生率が異なる因子を調べるのが最も正確である。しかし,もちろんそんなことは物理的に不可能である。そこで,実際には母集団(日本人全員)から一定の集団をサンプリングして,その集団において患者と対照を比較し,リスクファクターを同定するという作業が行われる。その際,サンプリングする集団が母集団を正確に反映するためには,ある程度以上の標本数(人数)の集団を無作為に抽出する必要がある。故に,現在は大規模スタディが世界中で行われ,そこで得られた結論をもとに医療を行うことがいわゆる“evidence based medicine”として正しいとされているのである。そこで,本項でも,主に最近行われた大規模スタディの結果をもとにして,リスクファクターをご紹介することとする。
しかし,大規模スタディといえどもサンプリングが行われているのであり,その性質によって種々の偏り(bias)が生じるのは避けられない。スタディの背景を知らずに大規模スタディの結果を臨床応用すると,とんでもない間違った結論を導く恐れがあるので注意が必要である。こういった誤解を避けるため,本項ではできるだけスタディの背景を紹介するように努める。
なお,緑内障は症候群であり,病型によりリスクファクターは大きく異なるが,本項では,最も頻度の高い病型である開放隅角緑内障のリスクファクターを取り上げることをはじめにお断りしておく。
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