特集 緑内障診療―グレーゾーンを越えて
Ⅰ.診断編
2.隅 角
中心部前房深度と隅角閉塞の関係
野中 淳之
1
1京都大学大学院医学研究科感覚運動系外科学講座眼科学
pp.68-73
発行日 2009年10月30日
Published Date 2009/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102923
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
一般的に,原発閉塞隅角の診断は,実際に隅角が閉塞する場である「周辺の」前房深度の評価によってなされる。すなわちvan Herick法により細隙灯顕微鏡検査で閉塞隅角の可能性を見出し,そして隅角鏡で直接閉塞隅角を確認する。これに対し「中心の」浅前房は原発閉塞隅角においてよく知られた基本的な特徴であり,かつ大きなリスクファクター1,2)である。したがって「中心の」浅前房から「周辺の」浅前房はある程度推測され,とくに細隙灯顕微鏡で一目見てわかるほど非常に浅い「中心の」前房深度の場合,「周辺の」浅前房の推測は容易である。
しかし,細隙灯顕微鏡では浅いと感じないような比較的正常な「中心の」前房深度であっても「周辺の」浅前房を認めるときはある。つまり,原発閉塞隅角の診断に必須ともいえる「周辺の」浅前房に対し,「中心の」浅前房は決して必須ではない。実際に,定量的に「中心の」前房深度を測定してみると,同じ閉塞隅角眼でも1mm前後から3mm弱まである程度の範囲に分布していて決して一様ではない3)(図1)。この分布は眼球全体からみれば非常に小さい個体差ではあるが,前房という非常に小さい空間のなかでは大きな差である。この「中心の」前房深度の個体差を各種の診断機器を用いて定量的に評価すれば,原発閉塞隅角の病態や治療方針を考えるうえでの手がかりが得られるに違いない。
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.