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はじめに
ある疾患にかかりやすいかどうかは,さまざまな要素がかかわりあっている。これらは多因子性疾患(multifactorial disease)と呼ばれる。そのなかには生まれもっている遺伝子も含まれる。もちろん,遺伝子の異常によって発症する疾患もあるが,遺伝子そのものに異常はないが,その遺伝子により疾患感受性が規定されていることがある。その1つが抗原提示,自己認識にかかわる主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex:MHC)抗原である。MHCは個人により保有する型が異なり,ある種の型をもっている場合,ある疾患に罹りやすいことが知られている。
糖蛋白質であるMHC抗原はヒトではヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)と呼ばれ,1954年にパリ大学のJ. Dausset(1980年ノーベル医学生理学賞受賞者)によって報告された。HLA遺伝子は第6染色体短腕に存在し,高度の遺伝的多形性がある。免疫応答制御の中心的な役割を果たし,全長約4,000kbであり,ヒトゲノム中でも早くから詳細な解析が進んでいる遺伝領域である。HLA遺伝子はその遺伝産物(HLA抗原分子)の構造上の違いからHLA-A,B,Cに代表されるクラスⅠ分子とHLA-DR,DQ,DPからなるクラスⅡ分子に分けられる。また補体関連の遺伝子をクラスⅢということもある。
HLAクラスⅠ分子はα鎖とβ鎖のヘテロダイマーからなる膜貫通型糖蛋白で,全身の有核細胞に発現している。また,HLAクラスⅠ分子は細胞自身がもつ内在性蛋白が分解されてできたペプチドと結合し,CD8+ T細胞がこれを認識して活性化する。
一方,HLAクラスⅡ分子はα鎖とβ鎖のヘテロダイマーからなる膜貫通型糖蛋白で,B細胞,抗原提示細胞(皮膚のLangerhans細胞,樹状細胞,単球,マクロファージ)および活性化T細胞に分布している。また,HLAクラスⅡ分子は抗原提示細胞が細胞外から取り込んだ抗原を分解してできたペプチドを結合して細胞表面に発現し,これをCD4+ T細胞に提示して活性化する。
HLAクラスⅠに属するHLA-B27陽性者に相関を示す疾患はHLA-B27関連疾患と呼ばれる(表1)。なかでも強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis:AS)の90%がHLA-B27陽性である。HLA-B27陽性者は急性前部ぶどう膜炎(acute anterior uveitis:AAU)を発症することがあり,HLA-B27関連ぶどう膜炎あるいはHLA-B27関連前部ぶどう膜炎と呼ぶ。
HLA-B27のサブタイプとして現在までにB*2701からB*2723が同定されており,白人ではB*2705が,また日本人ではB*2704が強直性脊椎炎や前部ぶどう膜炎との関連が高いこと,クラスⅡのHLA-DR12やHLA-DR1が前部ぶどう膜炎に何らかの影響を有するという報告もある1)。
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