特集 網膜硝子体診療update
Ⅳ.注目の疾患
5.その他
癌関連網膜症
大黒 浩
1
1札幌医科大学眼科学教室
pp.392-397
発行日 2008年10月30日
Published Date 2008/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102527
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はじめに
一部の悪性腫瘍患者に,中枢神経系への腫瘍の転移や浸潤を伴わず自己免疫機序により中枢神経系の異常を呈するものを悪性腫瘍随伴症候群(paraneoplastic syndrome)と呼んでいる1)(表1)。本症候群の原因は,腫瘍組織に神経組織と共通する抗原が異所性発現することに伴い血清中に自己抗体が産生され,これが中枢神経組織を攻撃することによるとされている。本症候群のうち,網膜が傷害され視覚系に異常をきたすものが癌関連網膜症(cancer-associated retinopathy:CAR)である。
癌関連網膜症には,上皮由来の悪性腫瘍に随伴する狭義の癌関連網膜症(carcinoma-associated retinopathy)と,若干異なる臨床症状を示す悪性黒色腫関連網膜症(malignant melanoma-associated retinopathy:以下,MAR)の2種類が知られている。これまでに癌関連網膜症(以下,狭義の癌関連網膜症をCARと略記する)は欧米で100例以上の報告があり,わが国でも数十例が報告されている2,3)。MARはさらに稀であり,欧米では10数例の報告があるがわが国では2例の報告にとどまる4,5)。
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