コラム 私のこだわり
見えることの不思議
久瀬 真奈美
1
1三重大学
pp.383
発行日 2008年10月30日
Published Date 2008/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102525
- 有料閲覧
- 文献概要
厚生労働省の2006年度「臨床研修に関する調査」によると,後期研修医が診療科を選択する理由の最上位は「学問的に興味があるから」だそうだ。私も医師として社会に出てから早10数年,最近この分野に進むとき「自分が何をしたかったか?」と振り返ることが増えた。基本を確認しないとぐらついてきた,という年齢なのかもしれない。
思い出してみると,私もその昔どの科に進むかを考えたとき,多くの後期研修医と同じ理由で「眼科」を選択した。人体の仕組みは謎とミラクルに包まれているが,そのなかでも「見える」という神秘的な感覚に魅せられてしまったのだ。ポリクリで細隙灯顕微鏡をのぞいたときに見た虹彩紋理のひだ,光を当てたときにスッと縮まる瞳孔の神秘的な美しさ ― そのときハッとし珍しい蝶々を見つけたような気持ちになったのを,いまでも昨日のことのように思い出すことができる。
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.