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はじめに
加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:AMD)は先進諸国における社会的失明の主要な原因の1つである。滲出型AMDの本体は脈絡膜新生血管(choroidal neovascularization:CNV)の発症であり,新生血管に対する治療を考える場合,その発症メカニズムを分子レベルで理解することが重要である。
血管新生は,①壁細胞の解離,②細胞外器質の溶解,そして③血管内皮細胞の増殖というプロセスからなるが,①にはアンギオポエチンなどが,②にはマトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metaroprotease:MMP)などが,そして③には血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)などが関与することがわかっている。これらの因子はいずれも治療の対象となりうると考えられる1~4)が,なかでもVEGFの関与は非常に重要で,近年この分子を標的とした「抗VEGF療法」が開発され5~7),大きな治療効果をあげている。
しかしながらタンパクの局所投与で治療を行う場合,その作用時間の短さが問題となる。そのため,眼内への遺伝子導入により,持続的な治療タンパクの発現が得られるドラッグデリバリーの手段としての遺伝子治療(図1a)が動物CNVモデルを用いて研究されている。先頃,米国で色素上皮由来因子(pigment epithelium-derived factor:PEDF)を発現するアデノウイルスベクター(Ad. PEDF. 11)による遺伝子治療の臨床治験が行われた8)が,近い将来,さらに多くのベクター,治療遺伝子を用いた遺伝子治療の臨床治験が行われていくものと思われる。
本項ではAMDに対するAd. PEDF. 11の臨床治験の結果を中心としたPEDFによる遺伝子治療,VEGFを標的とした遺伝子治療,そして現在使用されているベクターについて述べる。
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