- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
1971年にMachemerら1)によって開発された経毛様体扁平部硝子体手術は,長きにわたり3ポートの19~20ゲージ(以下,G)システムにより行われてきた。顕微鏡,周辺機器などの技術開発や病態理解のめざましい発達により,難治性疾患や黄斑疾患などへと適応は広がり,裂孔原性網膜剝離のスタンダード手術の1つとしても用いられるようになった。
しかし硝子体術者は満足せず,より小さい創で低侵襲の手術という理想を追求し続けた。その結果,白内障手術が切開創の大きな計画的水晶体囊外摘出術(ECCE)から小切開自己閉鎖創による超音波白内障手術(PEA)に移行したように,硝子体手術においてもsmall gauge surgeryが広く行われるようになった。de Juanらは1990年に25ゲージ硝子体手術器具のプロトタイプを作製し2),さらに2002年に経結膜的強膜創にカニューラを設置する25G硝子体手術システムを開発した3,4)。
ゲージが小さければ小さいだけ局所での侵襲は小さくなるが,効率は低下する。例えばカッターの外径が20Gの0.9mmから25Gの0.5mmになったことで,管壁の剛性を保つため内径はより小さくなる。流体の抵抗は内半径の4乗に反比例するため切除効率は悪く手術時間は長くなり,従来のハロゲン光源では十分な照度を得られなくなった。また,眼内器具の先端の剛性低下のため「しなり」が強く操作性が悪い,先端の曲がった器具が使用できないなど,20Gシステムと比較した場合,使用できる眼内器具が制限された。
この欠点を補い,かつ経結膜無縫合手術を可能とした23Gシステムが2005年にEckardt5)により開発された。23Gシステムはシャフトの剛性が高く(図1,2)6),吸引力も20Gカッターとほぼ同等であるというデータ6)もあり,20Gに近い感覚で手術を行うことができる。以前より硝子体生検や気体網膜復位(pneumatic retinopexy)を外来手術で行う1ポートから2ポートでの経結膜無縫合硝子体手術システム(office-based vitrectomy:OVIT)として,23Gのポータブルカッターを用いた方法7)も報告されており,これを機に近年小切開硝子体手術を行う術者が急速に増えている8~12)。
ここでは,23G硝子体手術の特性およびその長所,短所を確認し,実際の手術手技を解説する。
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.