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連載 公開講座・炎症性眼疾患の診療・12
眼トキソカラ症
Ocular toxocariasis
岩田 大樹
1
,
北市 伸義
1
,
大野 重昭
1
Taiju Iwata
1
,
Nobuyoshi Kitaichi
1
,
Shigeaki Ohno
1
1北海道大学大学院医学研究科病態制御学専攻感覚器病学講座眼科学分野
pp.240-244
発行日 2008年3月15日
Published Date 2008/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102143
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はじめに
特定の動物に寄生する寄生虫の卵や幼虫が人体に迷入した場合,ヒトが終宿主ではないため成虫にはなり得ず,幼虫のまま体内を移行し組織障害を起こすことがある。これを幼虫移行症(larva migrans)と呼ぶ。トキソカラ症は主にイヌ回虫Toxocara canis(図1),稀にはネコ回虫Toxocara catiの幼虫移行症で,幼虫移行症のなかでは最も頻度が高い。
1950年にWilder1)が摘出眼内に寄生虫を確認したことで初めて報告され,1956年にはNicoles2)がイヌ回虫の幼虫であることを報告した。国内では1966年に吉岡3)が,網膜膠腫の診断で摘出した小児の眼球からイヌ回虫の幼虫を同定した報告が最初である。近年のペットブーム,食生活の多様化に伴う感染機会の増加,また免疫学的検査の進歩により確定診断できる症例が増加している。本疾患は硝子体混濁や牽引性網膜剝離などにより予後不良な視力障害を生じることもあるため,注意すべき疾患の1つである。
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