- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
家族性滲出性硝子体網膜症(familial exudative vitreoretinopathy:以下,FEVR)は1969年にCriswickとSchepens1)によって報告された遺伝性網膜疾患である。眼底所見が未熟児網膜症に類似するものの,低体重出生や酸素投与などの既往がないことで知られる。わが国では1976年に大塩と大島2)によって報告され,その後多くの臨床研究により疾患概念が拡大され,診断基準も提唱されるなど,眼科領域で広く知られた遺伝性疾患となっている。特にわが国では若年者の網膜剝離の原因の1つとして注目されている。臨床像は,網膜血管の走行異常が特徴であり,「滲出性」という呼び名もふさわしくない症例のほうが多い。重症度や臨床症状が症例または家系ごとに異なり,症例の多くは自覚的に無症状である。FEVRは最初の報告以来「家族性」と冠されているが,家族性のものだけではなく孤発例も多い。これまで孤発例の遺伝性に関しては不明であった。
FEVRは遺伝要因の関与で発症すると考えられていたものの,長い間原因遺伝子はつきとめれられず,病態生理や遺伝性など不明な点が多かった。2002年にカナダのRobitailleら3)が常染色体優性遺伝のFEVRの原因遺伝子(FDZ4)を同定し遺伝子診断が可能となった。この知見が突破口となりFEVRの遺伝性や分子機構に関する理解が大きく進展した。疾患についての理解が進むにつれ,FEVRの遺伝性は複雑であること,また,骨粗鬆症偽網膜膠腫症候群(osteoporosis pseudoglioma syndrome:OPPG)やNorrie病などこれまで注目されていなかった類縁疾患がFEVRを理解するうえで重要であることがわかってきている。
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.