特集 網膜病変の最近の考え方と新しい知見
急性網膜壊死とその類縁疾患
坂井 潤一
1
,
臼井 嘉彦
1
1東京医科大学眼科学教室
pp.130-137
発行日 2008年2月15日
Published Date 2008/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102123
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はじめに
1971年,「網膜動脈周囲炎と網膜剝離を伴う特異な片眼性急性ブドウ膜炎について」というタイトルで本誌に報告された浦山らの論文1)が急性網膜壊死(acute retinal necrosis:ARN)の最初の記載である。その後,わが国のみならず欧米からも同様の症例の報告が相次ぎ,1970年代後半には新たな疾患単位として広く認識されるようになった。1980年代に入って病因検索が一気に進み,単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:以下,HSV)もしくは水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:以下,VZV)の眼内局所感染であることが判明した2,3)。さらに,1990年代になりPCR法の普及とともに眼内液を用いたウイルス学的検索が進展し,病因診断が可能なぶどう膜炎として確立されるに至った。
しかし,成人の多くが既感染である普遍的なウイルスでありながら急性網膜壊死がごく一部の健康成人にのみ突発する理由,ウイルスが眼(網膜)に伝播する経路・機序など不明な点も多く,また,視力予後不良となることの多い本症に対するより有効な治療法の確立など21世紀に多くの課題を残した。この7年,前世紀から託された課題を解決する新たな展開はあったのであろうか。本稿ではその点を踏まえて主として2000年以降の業績を検証したい。
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