特集 眼疾患のガイドラインと診療指針解説とアップデート
30 家族性滲出性硝子体網膜症(の診療の手引き)
近藤 寛之
1
1産業医科大学眼科学教室
pp.1410-1413
発行日 2022年12月23日
Published Date 2022/12/23
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000002961
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家族性滲出性硝子体網膜症(familial exudative vitreoretinopathy:FEVR)は網膜血管の形成不全によって,網膜剥離などを生じて視機能障害をきたす遺伝性の眼底疾患である。未熟児網膜症に似た病像を呈するが,満期産出生児に発症し,酸素投与の既往がない。原因となる遺伝子や遺伝形式が多様であるのが特徴である。症例の多くは常染色体顕性(優性)遺伝であるが,臨床所見の重症度のばらつきが大きいため,孤発例とみなされている症例も多い。重症度の左右差が大きいことも特徴である。他の遺伝形式として常染色体潜性(劣性)あるいはX染色体潜性(劣性)遺伝をとるものもある。原因遺伝子はWntシグナル伝達経路に属し,網膜の血管形成に関与するもの(FZD4, LRP5, TSPAN12, NDP)が主要な遺伝子であり,海外では症例の約50%でこれらの遺伝子の病的バリアント(変異)が見つかると報告されている1)2)。しかし,原因遺伝子が多数見つかることによって,疾患概念に他疾患との重複も示唆され混乱がみられている。
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