特集 眼科専門医に必要な「全身疾患と眼」のすべてコラム
眼科研究こぼれ話
暗順応にご用心
佐々木 勇二
1
1鳥取大学
pp.179
発行日 2007年10月30日
Published Date 2007/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102020
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私の恩師である玉井嗣彦鳥取大学名誉教授は,早期視細胞電位をはじめ臨床視覚電気生理を専門とされていました。いつも先頭に立って検査される研究者としての姿勢に感銘を受けた私は,これまで種々の疾患に対して各種ERG(網膜電図),VECP(視覚誘発脳波),EOG(眼球電図)を計測してきました。これらの検査の最も興味深いところは,自覚的な視覚反応を他覚的な波形で得ることができることです。眼を刺激すると,本人の意志とは無関係にはっきりとした反応が描出されます。ノイズの嵐に埋もれた微弱な反応でも,加算すると徐々にその姿を現します。そのようにして得られた結果は,定量的解析に耐えうる立派なデータとなります。
電気生理検査においてよい結果を得るためには,日々ノイズとの戦いです。以前に生理学教室で,自らの実験室や増幅用アンプを作製し細胞内電位を測定しながらノイズ対策をたたき込まれたため,得られる波形には少しこだわりをもっています。時々新入局の先生から「こんなERGがとれました」ときれいな60Hzのサイン波を見せられると,言葉を失いながらも急いでERG室に駆けつけ記録条件を是正したうえで再記録し,ほんとうのERG波形を示さずにはいられません。
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