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症例
患者:14歳,男児
主訴:左眼視力低下
現病歴:小学校低学年は視力良好であったが,両眼の視力低下が徐々に進行した。2年前から特に左眼の視力低下の進行を認め,眼鏡による視力矯正が不良となり,近医にて左眼の円錐角膜と診断された。今後の治療方針決定のため当科受診となった。
既往歴・家族歴:特記すべきことはない。
初診時所見:視力は右眼0.15(0.9×S-6.25D()cyl-0.50D 90°),左眼0.03(0.15×S-9.50D)であった。細隙灯顕微鏡検査では右眼には明らかな異常所見は認めなかったが(図1a),左眼は角膜中央部やや下方の突出および菲薄化を認めた(図1b)。角膜中央部の突出部では角膜実質浅層の瘢痕性混濁を認め,実質深層にVogt's striae(keratoconus line)を認めた。前房,中間透光体,眼底には両眼ともに異常所見はなかった。ビデオケラトスコープ(TMS-4®)による角膜形状解析では,右眼に角膜中央から下方にかけて角膜曲率半径の急峻化を認めたが(図1c),左眼は高度な角膜形状変化のためデータの欠損を認めた(図1d)。Klyce/Maeda法による円錐角膜スクリーニングでは,円錐角膜指数は右眼89.8%,左眼は0.0%であった。
Scheimpflug像を用いて角膜断面から形状解析を行うPentacam®では,右眼の角膜厚分布では明らかな菲薄化を認めなかったが(図2-1a),角膜前面の曲率半径の分布ではTMS-4®と同様の結果が得られた(図2-1b)。角膜前面と後面の高さを示すelevation mapでは角膜前面の突出(図2-1c)に一致して角膜後面の突出(図2-1d)を認め,角膜頂点は瞳孔中心よりわずかに下方に偏位していた。一方,左眼では角膜厚分布は正常範囲内であったが(図2-2a),角膜前面の曲率半径分布では中央部から下耳側にかけて広範囲に曲率の急峻化を認めた(図2-2b)。elevation mapでは角膜前面(図2-2c)および角膜後面(図2-2d)の高度な突出を認め,角膜頂点は瞳孔中心よりわずかに耳側下方に偏位していた。左眼の角膜の突出は高度で,側面からの細隙灯顕微鏡検査においても明瞭に観察されたが,Pentacam®のScheimpflug像にても左眼の角膜突出(図2-2e)は明確に定量化された。以上の所見から,左眼が進行した両眼性の円錐角膜と診断された。
治療・経過:非球面ハードコンタクトレンズ(HCL)装用により右眼は矯正視力1.2が得られた。しかし,左眼は非球面HCLでは十分な視力補正ができなかったため,円錐角膜用の多段階カーブを有するHCLの装用を行ったところ矯正視力0.9が得られた。HCL装用にて日常生活に支障のない十分な矯正視力が得られていることから,HCL装用にて経過を観察している。
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