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眼科に入局して2年目に,私は心療内科へローテートしました。入局する以前は,病気の遺伝についての基礎研究に長年従事していました。実験の毎日でしたが,病気に関することや,遺伝性疾患を持っている人とその家族のことは常に研究内容の話題になっていましたので,臨床に入ってみたいと思い,全身と関連のある疾患の多い眼科を選んで入局しました。それまで「物」を対象に仕事をしてきましたので「人」に面する臨床には不慣れがあると思い,「人」を重点に診る心療内科にローテートを希望しました。当初は「覗いてみたい」ぐらいの気持ちでしたが,ローテートの終了に,自分自身に,また他科との関係作りにプラスになる沢山のものを得ることができました。
心療内科は精神科の代わり名と誤解されることがあります。心療内科は病気の体と病気を持っている人の心も一緒に診療する内科専門です。心身相関いわゆる精神的のもの,心因性が病気に大きな影響を及ぼすことは常識とされています。たとえば,高度の緊張,ストレスが高血圧を引き起こします。また,普段コントロール良好な糖尿病はストレスが強い状況下では血糖のコントロールが難しくなることがよくあります。このような患者では,精神状態をよくすれば血圧は下がり,血糖のコントロールは良好になるのです。従来の医療では体の病気を治すのが医師(病院?)の務めで,心理面に関しては本人,あるいは社会に任せられていました。しかし,投薬のみ,体のみの病院治療では,このような高血圧なり糖尿病は治すことはできません。現在の心療内科では,病人の身体的,社会的,性格的背景を分析し,心理面を含めて診療を行います。このように病気と病人を同時に診療(心身医療)することは心療内科だけでなく,すべての臨床科にあるべき医療姿勢だと思いました。
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