特集 眼感染症診療ガイド
コラム 眼感染症への取り組み・いまむかし
MRSAと向き合って
外園 千恵
1
1京都府立医科大学
pp.207
発行日 2003年10月30日
Published Date 2003/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101455
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MRSA(methicillin-resistaut Staphylococcus aureus)という言葉を初めて聞いたのは研修医のとき(198? 年)です。それは「院内感染の起因菌として内科や外科で問題になっている菌」として若かりし私にインプットされました。その後,短期の外科研修でも,眼科臨床においてもMRSAには会うことなく月日は過ぎていきました。
1996年のこと,角膜上皮移植を行ったSteven-Johnson症候群の患者さんの医療用ソフトコンタクトレンズからMRSAを検出しました。眼脂もない,充血もない,角膜感染巣もないという状態です。自分が初めて出会ったMRSAに,どう対処したらよいのかわかりません。市販の抗生物質点眼薬をいろいろ変えてみたり,点眼回数を増やたりしてみましたが,MRSAは消えません。よくみると,角膜表面への血管侵入が少しずつ増強し,血管周囲の角膜上皮内に細胞浸潤があってわずかに曇ってみえます。「MRSAは,これらの所見と関係しているみたいだけど,どうしたら除菌できるのだろう。文献ではバンコマイシン(VCM)やアルベカシン(ABK)の点眼がよさそうだけど,上皮毒性が強そうだから上皮移植後にはまずいだろうなあ……。」1年くらいの経過ののち,思い切ってバンコマイシン点眼液を自家調整し恐る恐る使用しました。心配した上皮欠損は生じませんでした。でも夏のある日,突然に角膜感染症を発症し来院されました。アルベカシン点眼液と点滴を使い,約3か月で感染は治癒しました。
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