特集 眼感染症診療ガイド
コラム 眼感染症への取り組み・いまむかし
角膜移植と感染症
榛村 重人
1
1東京歯科大学
pp.235
発行日 2003年10月30日
Published Date 2003/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101461
- 有料閲覧
- 文献概要
眼手術では,感染症という怖い合併症を完全に排除することは残念ながらできない。しかし,近代化に伴って人間も少しは賢くなり,抗生物質のおかげで手術を安全に行うことができるようになった。特に白内障などでは,小切開化や手術時間の短縮によって,術後眼内炎の発症率は0.05%前後まで下がっている。全層角膜移植(PKP)の場合も,open surgeryであるにもかかわらず,0.1%前後と報告されている。しかし,全層角膜移植で問題となるのは,術後しばらく経過してからの角膜感染症である。
全層角膜移植は,通常の眼手術よりはステロイド点眼を長期間使う場合が多い。術後経過が良好な低リスク症例でも,約20%に拒絶反応が認められる。拒絶反応は,そのままドナー角膜の内皮機能不全に陥る可能性があるため,徐々に濃度を下げながらステロイド点眼を1年以上続ける場合もある。ステロイドを使用しているため,真菌や弱毒菌による角膜潰瘍をきたすことがあるのが角膜移植後にみられる感染症の特徴である。また,原疾患がヘルペスの場合は,ステロイド点眼を使用している限りは再発の可能性がある。
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.