特集 眼感染症診療ガイド
II.診断・治療のポイント
ぶどう膜・網膜
眼トキソプラズマ症
建林 美佐子
1
,
大黒 伸行
2
1兵庫県立西宮病院眼科
2大阪大学大学院医学系研究科感覚器外科学(眼科学)
pp.202-206
発行日 2003年10月30日
Published Date 2003/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101454
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病原体と感染経路
病原体であるトキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)は人畜共通感染性の細胞内寄生原虫でありネコを終宿主とする。ヒトへの感染はネコの糞便中の接合子囊,生肉中の増殖体や囊胞などが経口,経気道または経皮的に感染する後天感染と,妊婦の初感染の際に増殖体が経胎盤的に胎児に移行する先天感染とがある。
不顕性感染が多く,日本では成人の約3割が感染しているとされるが,その率は近年低下傾向にある。また,胎児感染の危険率は妊娠13週で6%,妊娠26週で40%,妊娠36週で72%と妊娠週数とともに上昇する一方,先天感染した場合に3歳までに臨床症状を呈する確率は妊娠13週で61%,妊娠26週で25%,妊娠36週で9%と,妊娠週数とともに低下する。したがって,先天性トキソプラズマ症の発症危険率は妊娠24~30週の初感染で最も高く約10%とされる。また,母体の初感染時期が妊娠初期であるほど児の症状は重篤である。
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