特集 眼感染症診療ガイド
II.診断・治療のポイント
ぶどう膜・網膜
猫ひっかき病
加島 陽二
1
1日本大学医学部附属練馬光が丘病院眼科
pp.195-200
発行日 2003年10月30日
Published Date 2003/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101453
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猫ひっかき病とは
猫ひっかき病は,その名の通りネコの爪・歯牙による皮膚外傷が原因で,発熱,感冒様症状,リンパ節腫脹を主症状にした疾患であり,主に小児科領域で扱われてきた1)。その合併症としては眼症状以外に,いずれも稀ではあるが痙攣を主とする中枢神経系障害,肝脾腫などの報告がある2,3)。眼合併症としては濾胞性結膜炎に耳前リンパ節腫脹を伴うParinaud oculo-glandular syndrome(パリノー症候群)および視神経網膜炎が有名である。近年,本症の原因菌としてグラム陰性桿菌であるBartonella henselaeが同定され,さらに血清学的診断法などの補助診断法が導入されたことで,いままで原因不明とされていた視神経網膜炎,ブドウ膜炎のなかに本症が埋もれていた可能性が指摘されている4)。
典型的な症例では,受傷後数日~2週間前後で受傷部位に赤紫色の丘疹が出現し,膿疱,痂皮の形成(初期皮膚病巣)をみる。軽い病変では,患者は普段より傷の治りが遅いと思う程度で終わることもある。皮膚病変が出現してからさらに2~3週間後に,受傷部位の所属リンパ節の疼痛を伴う腫脹が起こる(図1)。リンパ節は発赤・腫脹し,膿瘍を形成することもある。全身症状としては比較的軽く,数日程度の発熱などの感冒様症状が主体であり,多くの症例で合併症はなく,1週間以内に解熱する単峰性の経過をとる。
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